【鑑定雑感】No.001「キャップレートについて考える①」

①収益価格とキャップレート

 不動産の鑑定評価をしていると、常に頭を悩ませるのがキャップレートの問題である。ここ10年で随分と市場データが整備され、より客観的な判断が出来るようになった反面、そのデータに依存しすぎているのではないかと自問することがある。

 不動産の収益価格について少しでも齧った人であれば、「収益価格=純収益÷還元利回り(キャップレート)」であることは周知のとおりである。そして稼働している不動産の場合には「純収益」の算定はほとんど実績値に基づいて算定されるため、開発物件のように賃料等の収益を想定する必要がある場合を除けば、どの鑑定士が行ってもほとんど差が出ない。

結局、「キャップレート」が不動産価格を決定していると言える。しかも、キャップレートの僅かな違いが収益価格に大きな差を生じさせることが多いので、その判断は極めて重要である。

 幸いなことに、J-REITの発展や大手鑑定機関の継続的な調査によって比較可能な市場データが整備され、一定規模のオフィスについては精度の高いキャップレートの把握が可能となっている。

 しかし、個々の不動産は立地条件・規模・品等・市場需給等の多種の個別性を持つ故に、世の中に全く同じ不動産は存在しえない。その個別性をどのように適用するキャップレートに反映させていくか、突き詰めれば鑑定士の役割はそこにある。